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ニシダタクジ
ニシダタクジ
 ツルハシブックス劇団員。大学在学中、「20代サミットメーリングリスト」に出会い、東京王子「狐の木」に育てられました。豊かさとは、人生とは何か?を求め、農家めぐりの旅を続け、たどり着いたのは、「とにかく自分でやってみる。」ということでした。
 10代~20代に「問い」が生まれるコミュニケーションの場と機会を提供したいと考えています。



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2015年02月03日

美味しい魚料理をつくるには?

「夢を持て」というメッセージが
仮に子どもたちの心にダメージを
与えているとしたら、
それはいったい何のためのメッセージなのだろうか?

「将来のため」に必要なダメージ
なのだろうか?

テレビニュースがこんなにも絶望に
満ち溢れているのに、
「あなたの夢はなんですか?」
とシレッと聞ける大人って大丈夫か?と思う。

その前にあなたは自分の夢は何か、
明確に答えられるのか?と問いたくなる。

そしてさらに不思議なことに、
この「夢を持て」のときに、
題材に出されるのが、プロスポーツ選手の
超一流の選手、いまで言えば本田圭佑なのである。
(昔で言えばイチローや石川遼)

それは科学的なのだろうか?
本田圭佑の再現性はどのくらいなのだろうか?

小学生の早い段階で夢を決定して、
そこに向かってひたむきに努力していくと、
何%の人がワールドカップ日本代表に選ばれるのだろうか?

おそらくは天文学的に(大袈裟。宝くじほどはあると思う。)
低いはずだ。

それなのに、
「だから、あなたも夢を持ちましょう」
と画一的な指導が行われる。

しかも、昔と違って、
その夢の対象となるような職業モデル
(商店街にあるような花屋さんやお菓子屋さんや地域のおじさんおばさん)
に接する機会があまりにも少ない。

そんな中で憧れの対象も持っていない子どもたちに、
「あなたの夢はなんですか?」
と問うことに、どれほどの意味があるのだろうか?

そしてそれはそもそもなんのために
行われるのか?

教育が子どもの幸せを願って、行われているとしたら、
「夢を持つ」という行為はどれほど子どもたちを幸せにしているのか?

あるいは「(いまのところ)夢を持てない」という子どもたちを
どれほど苦しめているのだろうか?
あるいは、その苦しみが成長過程に必要なプロセスなのだろうか?

昨日のブログにも書いたけど、
手段と目的は逆転しやすい。

人財を育成することが目的の講座を作ったはずなのに、
いつの間にか講座の参加人数と報告書が目的となっている。

夢もそうだ。
夢を持つことで、今よりも充実した生活や将来に
なることが目的だったはずなのに、
いつの間にか「夢を持つこと」そのものが目的化している。


高橋俊介さんの「自分らしいキャリアのつくり方」(PHP新書)に、
面白いたとえ話があった。

~~~ここから一部引用

「魚は対面販売で買え」

与えられた知識や情報をベースに計画を立てて、
しかるのちに、その通りに行動を起こすことを「計画と実行の分離」と呼ぶ。
変化が少なく定型化された世界では、このやり方は合理的であり、
効果を発揮することも多い。
工業化社会、産業化社会ではこの方法は有効であった。

たとえるなら鉄道がそうだ。
乗降客、駅のキャパなど、要素を適切に組み合わせて
ダイヤを組み、その通りに動かさなければならない。

一方で航空機や船の場合は違う。
運行計画はもちろんたてるのだが、天候や他の機や船舶の都合もあり、
パイロットや船長の判断で、柔軟に計画を変更することが求められる。

魚料理もそうだ。
肉屋やスーパーにいけば必ず売っているであろう肉を
素材にするのと違い、
季節や、海の時化などによって、予定していた
魚がないことも多い。

そのときに、
商店街の魚屋で、今が旬な魚や料理方法を
聞いたほうが美味しい魚料理ができるはずだ。

ところが今は、魚屋が減り、
一年中スーパーに売っているような
養殖や冷凍の魚ばかりが売れるというような状況になっている。

たしかに、いつでも必ず手に入る魚なら、
事前の計画通り料理をつくることは可能だ。
だが、それは逆に、これだけ水産資源に恵まれている
日本にいながら、市場で流通する魚種が減少し、
特定の魚しか味わうことができないことを意味するのである。

このように「計画と実行の分離」が
その人の可能性を狭めてしまうのは、
キャリアにも当てはまると高橋さんは言う。

日本語には「用意」に対して「卒意」という言葉がある。
お茶の世界では、季節に合わせて、どんな趣のお茶会にするか
を設定し、周到な準備をする。

ところが、当日、春の暖かい日を想定していたのに
季節外れの雪が降ってしまうことがある。
そのときには、庭に積もった雪が見えるような工夫をしたりして
雪をプラスの要素に変えてしまう。それを卒意という。

そんなふうに日本人はその時々の変化に
応じて、柔軟に対応することをよしとする文化を持っているのである。

ならば、
就職や転職においても、
計画どおり実行することにこだわるより、
卒意で対応したらどうだろう?

~~~ここまで一部引用

おもしろい。
美味しい魚料理をつくるには、
計画を立てずに、魚屋で魚を買って、
オススメの調理法で調理すること。
いいなあ。

そしてこの後に続くところに、もうひとつ、
興味深い実験が載っていた。

~~~ここからも一部引用

「意思決定を無理に論理的にしようとすると裏目にでることが多い」

イチゴジャムの実験という有名な実験がある。
高級品から安モノまで、グレードの異なるイチゴジャムを
用意して一般の人にどれがいちばん高級品かを
選んでもらうブラインドテストをしたところ、
かなりの確率で実際の高級品が選ばれたという。

そこでもう一度同じ実験をやってもらうのだが、
今度はなぜそれが最高級品だと思ったのか、
理由も合わせて発表してもらうという条件をつける。
するとまるっきり直感で選んだ1回目よりも
高級品を選ぶ確率が明らかに下がるのだという。

これは論理的に意思決定しなければならないという
プレッシャーが直感に蓋をして、精度を落としてしまうからだと説明できる。

~~~ここまでも一部引用

なるほど。
なので、キャリアも直感を磨いたほうが有効なのではないか
と高橋さんはいう。

だから、「夢を持て」というフレーズは
多く言われている割には、あまり科学的な根拠が
少ないのではないか?と思われる。

何よりも、
日々や将来を充実させる、
という目的のための手段であったはずの夢が、
いつの間にか目的に替わっているという
事態は、なんとかしなきゃなあと思います。  

Posted by ニシダタクジ at 06:39Comments(0)思い