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ニシダタクジ
ニシダタクジ
 ツルハシブックス劇団員。大学在学中、「20代サミットメーリングリスト」に出会い、東京王子「狐の木」に育てられました。豊かさとは、人生とは何か?を求め、農家めぐりの旅を続け、たどり着いたのは、「とにかく自分でやってみる。」ということでした。
 10代~20代に「問い」が生まれるコミュニケーションの場と機会を提供したいと考えています。



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2016年10月20日

ガキの金メダル


「日本の反知性主義」(内田樹編 晶文社)

いやあ、面白い。
面白くて、一章ずつ読みたくなります。
毎日電車に乗れるって素晴らしい。

今日は小田嶋隆さんの
「いま日本で進行している階級的分断について」

頭のいい人ってどうしてこんなに
たとえ話が上手なんだろうって。

小田嶋さんは、
俗にいわれる「ヤンキー論」をバッサリ切り捨てる。

そして、優等生である「出来杉君」とそれ以外の「ヤンキー」
を題材に、このように言う。

~~~ここから引用

小中学校の時代に勉強ができたかどうかは、
後の人生に、決定的な影響を及ぼす。

出来杉君は優等生として高校、大学に進学し、
主としてホワイトカラーとして職に就く。

その間、出来杉君の人生観に大きな変動は無い。
彼らは、子供時代そのままの、
「人間の価値を決めるのは頭の良さだぞ」
という価値観を、牢固として抱いたまま大人になる。

ひるがえって、成績の良くなかった組の子供たちは、
思春期を迎えるや、そそくさと変身を果たす。
具体的には、自分を低く評価した「学校」なり、「世間」なり、
「体制」なりを否定する視点から、自他を再評価しにかかるのである。

彼らはある日、
「おい、百点なんてのはガキの金メダルだぞ」という衝撃的な事実に
突然、気づくのだ。

「この支配からの卒業」と尾崎豊は歌ったが、
学歴的諸価値から解放されたヤンキーの少年は、
その時点から、別の人間になる。

彼は、盗んだバイクで走り出すことはしないまでも、
ともあれそれまでとは別の足取りで、別の人生を歩み始める。

まずてはじめに、自分に特有な「価値」を模索する
作業をスタートする。

ある者は、クラス全員を笑わせることに狙いを絞り、
別の子供は腕っぷしで仲間を圧倒する作業に力点を置く。

どんなタイプのゴールを設定するにしても、
彼らが、ある段階で、偏差値競争から「降りた」ことは間違いない。

「学歴競争から降りる」ことについての見方は、
出来杉君とヤンキー層で、はっきりと違っている。

出来杉君は「脱落」と見なし、
ヤンキー層の多くは自分が敗北したとは考えない。
脱落したとも思わない。

「くだらねえから降りた」
「ダルいから勉強なんてやめたぜ」
「いい子ちゃんやってるのもいいかげんウザいからバイバイした」
というふうに、彼らは、自分が競争から降りたことを、肯定的にとらえている。

「ってか降りたっていうより別のステージに乗り換えたんだけどな。」
ぐらいな力加減だ。

この時点で「ヤンキー」の側の少年たちが獲得することになる
「非学歴的な価値観」を「学歴的な価値」の信奉者である
出来杉君たちが、
「ヤンキー美学」ないしは「ヤンキー主義」と呼んでいるというのが
ヤンキー論の実態なのだと私は考えている。

出来杉君の側から見れば、
「ヤンキー」は、なんだかいつも群れていて、
型にハマっていて、見え透いていて、個体識別のむずかしい、
単純で没個性なアタマの悪い人々ということになる。

じっさい、ヤンキー論の細部はほぼその種の記述で埋まっている。
が、「ヤンキー」の側から見た「出来杉君」は、
出来杉君から見たヤンキー以上に型にハマった、ガチガチのロボットだったりする。
なにしろ、小学校の時からものの見方が変わっていないのだからして。

~~~ここまで引用

いいですね、これ。
学歴信仰、競争幻想に憑りつかれてしまうと、
一生勝ち続けなければならない。
しかもそれは、単一の、他者からの評価によるものである。

それをいつかのタイミングで、
「次のステージ」に乗り換えること。
これが、人生においては必須だなあと思う。

そして、カッコよく見える大人には、
そのような「ステージを乗り換える瞬間」
があったのではないか。

それは別に学歴競争からドロップアウトしたからではなくて、
この先には、自らの幸せはない、と感じた瞬間、
次のステージを探す旅が始まり、
たどりついたのだろうと思う。

そんな旅のはじまりをつくる本屋でありたいなあと
強く思った。
素敵な一節をありがとう。  

Posted by ニシダタクジ at 08:13Comments(0)