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ニシダタクジ
ニシダタクジ
 ツルハシブックス劇団員。大学在学中、「20代サミットメーリングリスト」に出会い、東京王子「狐の木」に育てられました。豊かさとは、人生とは何か?を求め、農家めぐりの旅を続け、たどり着いたのは、「とにかく自分でやってみる。」ということでした。
 10代~20代に「問い」が生まれるコミュニケーションの場と機会を提供したいと考えています。



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2017年05月19日

「予測できない」というモチベーション・デザイン


「つながるカレー」(フィルムアート社)の加藤文俊さんに初めてお話を伺った。


Clip日本橋で開催されたこの企画は法政大学の長岡先生のゼミの一つ。「カフェゼミ」


30人を超える人がいたような。

「脱・合目的的」な実験の場、つまり
偶然を起こすことを目的としているカフェゼミ。
大学生のゼミ生が20人くらいと
一般参加者が15名くらいかな。

直感と好奇心で動く・フットワーク&ネットワークを基本スタイルとして、
創造的なコラボレーションのデザインを目指す長岡研究室は、

古い価値観や慣習に囚われず、
自由闊達に個性を発揮しながら、
一人ひとりの多様性を受け入れる、
プレイフルな協働の姿を模索する。
詳しくはこちらから。
http://www.tnlab.net/



さてさて。
つながるカレーのお話。

現在までに60回を数えている
加藤さんらが手掛ける「カレーキャラバン」
http://curry-caravan.net/

はじまりは、
アートプロジェクトの一環として
墨田区でカレーをつくった。

そのとき、小学生が野菜を切ってくれたり、
近所のおっちゃんがジョッキ生ビールを
差し入れしてくれたりした。

これは!
と思い、活動をスタート。
以降、全国各地を含め、
60回にわたるカレーキャラバンを実行。

そんな話を聞きながら、
カレーキャラバンという
参加のデザイン、コミュニケーションのデザイン、
あるいは非営利活動のモチベーション・デザインに
ただただ驚いていた。

そして「アマチュアリズム」について
考えさせられた。

長岡先生のレジメに載っていた。
脱・専門主義=アマチュアリズムを引用する。

「アマチュアリズムとは、専門家のように利益や褒章に
よって動かされるのではなく、愛好精神と抑えがたい興味に
よって衝き動かされ、

より大きな俯瞰図を手に入れたり、境界や障害を乗り越え
さまざまなつながりをつけたり、

また、特定の専門分野にしばられずに、専門職という
制限から自由になって観念や価値を追求することをいう」
(E.サイード 『知識人とは何か』)

なるほど。
いいね、アマチュアであること。

~~~以下、イベントメモ

売りものじゃないところがポイント。
無料だからプロではない。
お金を取り始めると味を追求しちゃう。

お金をもらうつもりでやんないといいものできないだろう、という呪縛。

いい大人になって、
使い道のわからない月5000円くらいあるでしょう?と言われ、
いいんじゃないか、と思えた。

赤字モデルは、ビジネスモデルを意識している。
まだあの当時は若かった。
ビジネスモデル?眼中にないよ。
つながるカレーは、欠かせない出費なんだ。

まちかどでカレーをやると、気質が見える。
一時的・即興的に人びとの交流の場が生まれる。

方法としてのカレーキャラバン。

プロジェクトはたとえひとりぼっちになってもやる、
意味があってもなくてもやる。そういうもん。

公パブリックと私プライベートのあいだの共コモンズを取り戻す。
いまや公か私しかなくなった。共の領域の消失。空き地がなくなった。

カレー食べてるときは境界線があいまいになる。
1時間だけコモンズができる。カレーによって境界線に揺さぶりをかける。

もともとこの図があってカレーをやったわけじゃない。
コモンズを取り戻すために始めたわけじゃない。
やってみて、振り返ってみたら、共の復活だった。

ご当地カレーという名前にとらわれず、現地で買うだけでいい。

何が起こるかわからない。これがカレーキャラバンの最大の価値だ。
カレーをつくるまで、何ができるか、誰と出会うかわからない。
何カレーができるかわからないのだ。

カレーはみんなでつくるのにちょうどよかった。嫌いな人が少ない、
みんなが一言ある、ツッコミを入れられる、
敷居が低く、参加しやすい。身分を問われない。

月に一回だからやり方を忘れる、
上達しない、常に初心を保つ構造になっている。

参加のデザインを生むには、常に下手でいることが大事。
プロにならない、アマチュアであること。
上手くならない。プロへの誘惑を断ち切る。

帰りの車の中での振り返りが1番楽しい。
それは、予想しなかったことがたくさん起こるから。
予想しなかったことが起こることこそがレジャー。

~~~ここまでメモ(講演録・自分の感じたこと)

まあ、こんな感じ。
一言でいえば、痛快な時間でした。
なんだかスカッとした。

つながるカレーのアマチュアであり続ける仕組みに感銘した。
結果論なんでしょうけど。

一番印象に残っているのは、
「帰りの車の中で振り返りをしているときが一番楽しい。」

そうそう。
それだ!って。
振り返りが楽しくなるような活動をしなくちゃいけないよね。

そして、
カレーキャラバンの最大の素晴らしさは
「アマチュア」であることであり、
「アマチュア」であり続ける仕組みである。
(これは完全に結果論というか振り返ってわかったことだと思うけど)

ご当地カレーという名前にとらわれずに
現地で食材を調達する、ということだけが決まっている。
それは、何カレーができるか、わからないということ。

じっくりと時間をかけてつくる。
それは、だれが参加するかわからないということ。

そしてなにより、カレーであるということ。
そこには、だれもが、一言言いたかったり、
後から隠し味を付け足したかったりする。
つまり、途中からでも参加ができる。

参加のデザイン。
フラットな関係性のデザイン。

そしてなにより、
「予測不可能」という、モチベーション・デザイン
ができているのではないかと感じた。

加藤さんたちをカレーキャラバンに掻き立てるのは、
その「予測不可能な何か」との出会いであり、

アマチュアであり続けることにより、
その現場には、「失敗」という概念がそもそも
存在しないのだ。

カレーがおいしかったりおいしくなかったりということばかりではなく、
人が思ったより来なくて、カレーが大量に余って、ジップロックに入れて
持ち帰ったことでさえも、「予測不可能な何か」である。
それが楽しくて、やめられないのだろうと思った。

ツルハシブックスで店員サムライをしていた
ノジマモエコがかつて言っていた。
「ツルハシブックスに行くと、誰かに会えるから。」

6次元のナカムラクニオさんも言っていた。

「場づくりにおいて大切なことは
『もしかして次に来た時には、もうここはないんじゃないか』
と感じさせるような『一期一会の空間』をつくることだと思っています。
それこそが、どこでも買えない価値のあることなんだと、
みんなすでに気が付いているのではないでしょうか?」

カレーキャラバンは、
文字通り、1回だけの、一期一会の「場」がそこに出現する。
それは本の中でも書かれているが、まさに即興劇のようだ。

何が起こるかわからない。
それがカレーキャラバンだった。

「目的があり、目標があって、
シュミレーションして、計画通りに実施すること。
「想定外」が起こらないように、万全の準備をすること。
そうやって描いていたとおりの目標を達成する。」

「振り返りとは、次回の開催に向けて、
改善点を洗い出し、つぶしていくこと。」

そうやって得られるものとは、
いったい、お金と何なのだろうか?

予測不可能で、何が起こるかわからない。
その場に居合わせたメンバーで、何かをつくっていく。

そこで起こる出来事すべてが、
次の活動へのモチベーションになっていく。
そんなカレーキャラバンから大いなる問いをもらった。

その問いが何か、まだよくわからないのだけど(笑)、
「もやもや」してるけど、痛快な時間でした。  

Posted by ニシダタクジ at 08:12Comments(0)学び