2021年06月24日
世界が輝いて見える1冊
「進化思考」(太刀川英輔 海士の風)
読み直し始めます。
冒頭の序章「創造とはなにか?」が2度目なのにすでに激アツです。
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本当にすごいデザインは、人とモノとの新たな関係性を生み出す。
すると古くから、建築家とは「人とモノとの新たな関係性を生み出すひと」で、「専門領域など存在しないようにふるまっている」ことに気づいた。古来から創造性を発揮してきたデザイナーたちには、現在のような専門分化した姿はなく、ただ創造性を発揮するための技術と思考があった。
デザイン領域の専門分化が進んだのは高度経済成長期以降のことで、むしろその頃からデザインはこぢんまりと矮小化し、社会運動としての勢いを失ってしまったように見えた。
今の私たちの生活を構成しているのは、多くの無名の人たちによる連鎖的な創造によって、たゆまぬ改善を積み重ねてきた結果ではないか。誰が作ったのかわからず、それを誰かが改善する。その繰り返しが世界を創ってきた事実が、すでに創造は個人によってなされるという私たちの思い込みを揺さぶる。
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「プロジェクトベースドラーニング(PBL)」の重要性が叫ばれているが、
プロジェクトの定義とは、「プロジェクトとは、独自の製品、サービス、所産を創造するために実施される有期性の業務である。」(PMBOKより)
これを読み解き、「プロジェクトとは、目的・目標を期限内に達成する業務」と定義している場合も多い。
しかし、大切なのは、「創造」の部分ではないのか?
問うべきは、期限内に目標を達成したか、ではなく、
そのプロジェクトは独自の何かを「創造」しているか?ではないのか?
「授業」もプロジェクトのひとつのように見える。
限られた時間の中で、目的・目標を達成するための「活動」であるからだ。
しかし、「プロジェクト」の定義からすれば、
そこに「価値」があるとしたら、「創造」というキーワードが必要だ。
プロジェクトは「創造」する。
その創造のためのツールが、ワークショップ手法であり、フィールドワーク(体感)である。
上に引用した最後の一節である
「今の私たちの生活を構成しているのは、多くの無名の人たちによる連鎖的な創造によって、たゆまぬ改善を積み重ねてきた結果ではないか。誰が作ったのかわからず、それを誰かが改善する。その繰り返しが世界を創ってきた事実が、すでに創造は個人によってなされるという私たちの思い込みを揺さぶる。」
そう。「創造」は個人単位ではなされないのだ。
人と人、環境、社会、時代など関係性によって、
「創造」は起こり、「創造」はつづいていく。
そうするとさきほどのプロジェクトの定義である、
「創造」と「期限がある(有期性)」は両立しないことになる。
僕は「まなびの創造」をテーマに、高校生も地域の大人も「場」に溶けだして、その場を夢中になって楽しんでいたら、気がついたら「変容」していた、という仮説を採用しているが、
そのような「場」の目的は「創造」することであり、そしてそのベースには「発見」がある。毎時間毎時間の小さな共感や違和感、印象に残ったことが高校生にも地域の大人にも「発見」を生み、それが「創造」につながるかもしれない、というワクワクがモチベーションの源泉になるような「場」づくりをしたいと思っている。
その「まなび」は期限内に終わらない。何かが「創造」されれば、物語は続いていく、または新しい物語が始まっていく。「進化」的に言えば、変異が起こり、その適応に向けた物語が始まる。「まなびの創造」も個人によってはなされない。だからこそ楽しいし、だからこそ「場」をつくる意味がある。個人は創造する「場」の構成員として確かにそこにいる。
また、読み進めていくとして、先にラストの100ページから。
「未来はどこにある?」という子どものような問いに答えてくれる本でした。
そして、読み終えたら、ワクワクがとまりません。
世界が輝いて見える1冊。
そんなキャッチコピーを本屋のPOPに立てたい。
「創造」はどこから起こるか?を生物の進化の根源である「変異」と「適応」の両輪で説明してくれるロマンチックな本。
ラスト衝撃だったのは、幼児教育の提唱者フレーベルのところ。
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「すべて天地間の万物の中には、一つの永久不滅の法則が存在し、これが万物を生かし、しかも、これを支配している。その法則は、外界すなわち自然にあっても、内界すなわち精神にあっても、また内外両界の生命にあっても、同時に常に明瞭に現れている。」(フリードリヒ・フレーベル「人間の教育」1826)
私たちの受けている教育の基盤には、進化という自然の叡智から教育を抽出した思想がすでにあったのだ。
その「永久不滅の法則」こそが「進化思考」すなわち変異と適応の往復から生まれるという進化の構造なのである。
フレーベルは幼児教育だけでなく、さまざまな教育に対して多大な影響を与えた。
ゲーテの自然哲学からフレーベルの教育、そしてバウハウスに至る、近代の創造性の進化。現在のあらゆる教育に絶大な影響を与えたのも、生物の進化に宿る創造性の原理だったのだ。
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現在の教育の出発点には、自然の叡智があったし、「創造性」というキーワードがあった。
いつのまにか、それが「効率性」へとシフトしていった。
「目標を達成する」学びだけではつまらない。
「価値を創造する」学びをつくっていくこと。
それが、いわゆる「探究学習」の大きな意味なのだろうと思う。
「まなびの創造」。
そんなことが実感できるプロジェクトを一緒にやらないか。