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ニシダタクジ
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 ツルハシブックス劇団員。大学在学中、「20代サミットメーリングリスト」に出会い、東京王子「狐の木」に育てられました。豊かさとは、人生とは何か?を求め、農家めぐりの旅を続け、たどり着いたのは、「とにかく自分でやってみる。」ということでした。
 10代~20代に「問い」が生まれるコミュニケーションの場と機会を提供したいと考えています。



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2014年12月23日

サンクチュアリ出版と僕 2 本を並べるの、楽しいんですよね

2001年1月。
僕はサンクチュアリ出版の営業になった。
基本給なしの完全出来高払い。
(いわゆる営業委託契約なのだが)

最初に営業した新刊は
高橋歩さんの「LOVE&FREE」

とりあえず右も左もわからないので、
本屋さんに片っ端から訪問して、名刺を差し出す。

「こんにちは。サンクチュアリ出版です。」
「ああ、営業さんね。」
「新刊のご紹介に参りました。」
「どんなの?」

「高橋歩さんの写真とエッセイがついた本です。」
「旅エッセイ?うちそんなに売れないんだよね。」

ほとんどの書店員さんがそういうリアクションだった。
そこで、僕は既刊本を見せながらシャウトする。

「こういう熱い本が新潟に必要なんすよ!」

熱苦しい営業。
内心、
「必要なのかもしれないけど、大事なのは売れるか売れないかなんだよ」
ときっと思われていたと思う。

「で、指定なの?」
(し、指定ってなんだ?)
※指定とは指定配本のことで、販売前に書店が冊数を指定すること

そこでケースケさんに習った、あれだ。
「フリー入帳です。」

とまあ、噛み合わない会話をして、営業ライフが始まった。
※ちなみにフリー入帳とは、いつでも返本ができる、という意味の業界用語。

最初の共感者は、
蔦屋書店南万代フォーラム店の大森さんだった。

「ええ。サンクチュアリ出版ですか!僕高橋歩さん、好きなんですよ」
「おお!!そうなんですよ。ガツンとやりましょうよ!」
ということでフェア決定。
サンクチュアリ出版の本がドーンと並んだ。

どこの本屋に行っても、
「サンクチュアリ出版?聞いたことないなあ」
と言われながら、本を見せて、ああ、見たことはある、
みたいな感じなリアクションだった。

それを本を1冊1冊説明しながら、
こういう本が新潟の若者を元気にしていくんだと
悩める若者に本を届けたいと営業をしていた。

いつの日か、本屋さんの状況をよく見るようになったし、
本屋さんの話をよく聞くようになった。

どういう本が並んでいて、
どういう本が売れているのか、
どんな人が買っていくのか、
を見るようになった。

「高校が近くにある」と言われると、がぜん燃えた。
サンクチュアリの本を高校生に届けたい、と心から思った。

フェア注文をもらえるようになった。
「この場所で、こういう人たち向けに、こういうラインナップでいきましょう。」
と本屋さんと共感できるようになった。

いま。
思うと、出版営業の仕事は、
「本屋さんと共演者になる。」ことだと思う。

「共犯者」と言ってもいい。

たとえば、
冬のプレゼント本のフェアをやるとき。
こんな人にこんな本が届いたら、うれしいなあと思えるかどうか。
その思いを共有できるかどうか。

それができたとき、出版営業の仕事は楽しくなる。

代官山蔦屋の渡部さんが、
「売れる本じゃなくて、売りたい本を持ってきてください。」
と語っていたけど、(カッコイイ)

書店員さんと一緒に、「売りたい」と思える本、思えるフェアを
並べられるかどうか。
そこに、実は仕事の楽しさも売り上げもかかっているのだ。

え、売り上げは関係ないでしょう。

と思ったあなた。
実は関係があるんです。

新潟にある蔦屋書店の大部分はトップカルチャーという会社が
運営している本屋だ。
その寺尾店に伝説の店員、Yさんがいた。(当時)

いつものように盛り上がって、
「フェアやりましょう。」ということになった。
平台で16点のフェアが並んだ。

売れた。
ビックリするほど売れた。

その半年後、Yさんは南笹口店に異動になる。
「またサンクチュアリのフェアやりましょうよ。」
とふたたびフェアをやることになった。

売れた。
また売れた。
ヤゴマジック炸裂。(あ、名前が・・・)

そのさらに1年後か2年後か、
今度は南万代店に異動になった。
南万代は大森さん時代から、けっこう大きく展開してくれているところなので、
さらにガツンとやってくれた。

そこで、僕はある異変が起きていることに気がついた。
寺尾店と南笹口店に置いてある
サンクチュアリの本がピタリと売れなくなってきていた。

いや、フェアがなくなったわけではない。
Yさんがいなくなっても、フェアは残っていた。
いい場所で大きく展開されていた。
しかし、追加注文が入らない、つまり、売れなくなったのである。

不思議なことがある、とずっと思っていた。
なぜ、Yさんがいる店だと売れて、いなくなると
売れなくなるのか。

そして驚いたことに、
Yさんはサンクチュアリの本をほとんど読んだことがないのだという。

彼女が新潟中央インター店に異動になったときに、
やっと謎が解けた。
サンクチュアリ出版の冬のフェアを、平台にきれいに円形に並べていた。

「これ、展開写真でアップしたいので撮らせてもらってもいいですか?」
と写真を撮ろうとすると、Yさんが言った。

「本を並べるの、楽しいんですよね。」

「それだーーーーー!!!」
と僕は心の中で叫んでいた。

本が入荷されたとき、楽しんで並べているかどうか。
「また本部のヤツら、フェア送ってきやがって。」
と思うのではなく、(笑)
この本の隣はこの本のほうが色的にきれいだな、とか
判型が違うのはこうやってアクセントをつけよう、とか。

そう思っているかどうか。

これは決して精神論ではない。
売れが、まったく違うのだ。

それくらい本屋さんに来るお客さんの感性は鋭くなっているのだ。

店員さんがその本を楽しんで並べているかどうか、
を感じとることができるほどの感性をもっているのだ。

だから、出版社の営業は、
届いた本を楽しく並べたくなるような営業をしないといけない。

そうやって作られた棚やフェアは、
本屋と出版社営業の共同作品であり、
それがたとえ売れなかったとしても、
きっとまた本屋さんはその出版社の本を注文してくれるだろう。

売れない責任を、自分(書店員)も負う。
それが共演者、共犯者になるということだ。

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Posted by ニシダタクジ at 09:31│Comments(0)足跡
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