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ニシダタクジ
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 ツルハシブックス劇団員。大学在学中、「20代サミットメーリングリスト」に出会い、東京王子「狐の木」に育てられました。豊かさとは、人生とは何か?を求め、農家めぐりの旅を続け、たどり着いたのは、「とにかく自分でやってみる。」ということでした。
 10代~20代に「問い」が生まれるコミュニケーションの場と機会を提供したいと考えています。



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2017年06月04日

国家がプロデュースした「神話」と博物館という「神殿」

国家がプロデュースした「神話」と博物館という「神殿」
「誰も戦争を教えてくれなかった」(古市憲寿 講談社)

移動があったので、1日で読み終わりました。
3時間くらいかな。
古市さんのスタイルは読みやすいし、
随所に出てくるツッコミが好き。

さてさて。
「あの戦争」について、28歳(当時)の古市さんが、
世界各地の戦争博物館を見て回り、
その考察を1冊にまとめた本。

いわゆる、「戦争本」とは違い、
なんだろう、メタ的に「戦争」を
遠目から眺めようという感じ。
社会学好きな人にオススメ。

読書サーフィンというか。
この本も川崎駅のブックオフで買ったのだけど、
最近は、読む本がみんな関連しているようで
とっても楽しい。

最近のテーマは、
「就職」とか「キャリア」を考える前に「近代」をどうとらえるか?
「国民国家」というシステムをどう考えるか?
ということなのだけど、そういう意味でも今回の本はとても面白かった。

「近代国民国家は、政教分離という「政治に宗教の力は借りません」
という宣言からスタートした。
だけど人をまとめあげるのに宗教ほど便利なものはない。
そこで、宗教に代わる新しい神と、
新しい国民神話を、国家プロデュースのもと作ろうとした。」

つまり、博物館は「神殿」なんだと。

「近代」というのは、戦争の時代であり、
中世との最大の違いは、
戦争において国民が戦うということだ。

なるほど。

産業革命にともなう、急速な人口増。
それに伴う資源の不足。
それを他国や南方に求めた西欧諸国。
その前に「民主主義」の成立があった。

民主主義だろうが、貴族が国を治めていようが、
国というシステムを採用するということは、
誰か政治をする人がいて、その政治を受け入れる人がいるということ。

フランス革命のあと、時の為政者たちは、
宗教に代わる国家プロデュースの神話をつくろうとした。

日本も同じだ。
明治政府は天皇を神とする国民国家へと
一気に舵を切った。

堀江さんが
「すべての教育は洗脳である」(光文社新書)
に書いているように、
「国民国家」そのものがファンタジーなのだと。

だから、現在、世界各地の
戦争博物館を見て回ると、
その国の戦争に対するスタンスがわかる。

ドイツは、敗戦国としての責任を甘受しようとしているし、
イタリアは、国家という意識がそもそもないから、
国のスタンスとしての博物館がない。

中国は、日本に侵略された歴史を少し語り、
韓国は、朝鮮戦争後の独立を語る。

しかし、我が国の博物館は、
明確にスタンスを決めることなく、
いろいろな主張に配慮した展示となっている。

でも、きっと、
日本はそういうものなのだ、と。

「誰も戦争を教えてくれなかった」のは、
「大きな物語」、つまり統一見解として、
いまだに「あの戦争」を位置づけられていないからなのだと、
古市さんは言う。

そういうことが苦手な民族なのかもしれない。
あるいは、為政者たちに「経済成長」という物語に
意図的にシフトさせられたのかもしれない。

時代の流れで、
民主主義が起こり、近代国民国家が成立した。
国民が国のために戦う「国民国家」は戦争にめっぽう強かった。
そしてアジアがそこに巻き込まれていく、そんな時代。

為政者はいつも、民衆には思考停止を望む。
それのほうが効率的だからだ。

戦争博物館を通じて見えてくる、国家と国民の関係。
国民国家という仮説。

それって今の
企業と個人の関係にも似ているのではないなと思うのだ。

思考を深めるいい1冊でした。
ありがとうございました。

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Posted by ニシダタクジ at 05:41│Comments(0)
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