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ニシダタクジ
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 ツルハシブックス劇団員。大学在学中、「20代サミットメーリングリスト」に出会い、東京王子「狐の木」に育てられました。豊かさとは、人生とは何か?を求め、農家めぐりの旅を続け、たどり着いたのは、「とにかく自分でやってみる。」ということでした。
 10代~20代に「問い」が生まれるコミュニケーションの場と機会を提供したいと考えています。



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2019年07月30日

「消費者」という「自由」

「消費者」という「自由」
「街場の平成論」(内田樹編 晶文社)

ううーん。
って唸るばかりの本。
現実を目の前に苦しくなります。

その中でも(まだ途中ですが)
平川克美さんの「消費者」「自由」に関する記述が的確だと
思ったので、ブログに残したく、転載します。

~~~以下本文よりメモ

「週休2日制」は、単に1週間に休日が1日増えたというに止まらない変化を日本にもたらした。

週5日は労働のための日だが、残りの2日は消費のための日になったのである。

多くの日本人は、豊かな余暇を過ごすために、働くようになった。

週休2日制、労働者派遣法改正による非正規雇用の増加、24時間営業のコンビニエンスストアの隆盛という3つの変化は、日本に新たな階級としての「消費者」を生み出した。

ここでいう「消費者」とは単に市場における消費行動をするものののことではない。金さえあれば、誰からも命令されることなく自由に働き、自由に生活し、自由に余暇を楽しむことができるを内面化したものの謂である。

「消費者」は、これまでの古い慣習や、しがらみから自分を解き放つことが可能な存在であった。一人の時間を大切にし、誰からもその行動を干渉されず、好きなときに好きなものを自由に所有することができる。

消費者が持った解放感は、日本の歴史上稀有のものだったように思える。金の力が、個人を解放するという幻想を多くの日本人が共有したのである。ただし、金さえあればの話である。

そのことは、お金の万能性をさらに高める結果になったとも言えるだろう。「消費者」こそが自由と平等の享受者であるならば、お金こそがそれらを手に入れる鍵だからである。

もともと、自由も平等も旧体制転覆の熾烈な市民革命を経て人々が獲得したものであり、その結果として「個人」という強固な概念が生まれてきたという歴史的事実がある。

革命を経ない日本では、長い間「イエ」が社会の最小単位であり、「イエ」を存続させるために封建的な秩序が支配的であり、女性もまた「イエ」の存続のための重要な役割を担わされることを余儀なくされてきた。

考えてみれば、「消費者」は、革命を経なかった日本人が初めて手にした「個人」であったと言えるかもしれない。ここでも、但し書きがつく。但し、金さえあれば。

昭和天皇崩御のときの、日本総右ならえと、ビデオ屋での待ち行列という二つの相矛盾する行動は、「イエ」の価値観と「消費者」の価値観が交錯した風景でもあったのだ。

個人主義は、一人一人の人間には、他の何ものにも代えがたい価値があることを謳う思想であり、個人の権利と自由は、国家や共同体から束縛されたり、毀損されたりすべきではない最優先のものであると考える。

奇矯に響くかもしれないが、日本人がが獲得した個人の概念は、金で買ったものであり、金がなければ、その個人とは社会によって淘汰され、そのフルメンバーから除外される危険性もあったのだ。

~~~ここまで本文からメモ(平川克美 「消費者」主権国家まで)

金で買った「個人」。
つまり「消費者」としてふるまうことこそが自由への唯一の道だと多くの人が信じていた時代。
「経済合理性」という一元化した価値観に、みんなが投げ込まれていった。

そこに幸せはあったのだろうか?
他者との比較しかない。

それこそが「消費者」という自由だった。

この章のラストに平川さんも書いているけど、
経済合理性という物差しとは別の物差しを手に入れる以外にはないように思える。

そうそう。
それを自らつかみとっていくこと。
あるいは、百姓のように生み出していくこと。

それが本当に「自由」になる唯一の方法であると僕も思う。

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Posted by ニシダタクジ at 09:15│Comments(0)
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