2021年01月13日
アイデンティティデザインの時代
「仮想空間シフト」(尾原和啓 山口周 MdN新書)
いいですね。
こういう軽い本好きなんですよ。
いいキーワードたくさんもらいました。
~~~以下一部引用
これから起きる変化っていうのは、新型コロナウイルスによって突然変異的に生じる未知のものではなく、元から本質的に存在していた考え方であったり将来像であったりが一足早く顕在化しただけだ。
これは言葉を変えれば「今まで私たちが信じたきたことは実はフィクションだったんだと気づく」ということができる。
「大企業」というのは完全なフィクションですよね。
1 仕事が変わる
2 暮らしが変わる
3 社会が変わる
4 人生が変わる
5 国と行政が変わる
issueを見つける能力をつけること。
世の中ってこうあるべきじゃないか、仕事ってこうあるべきだよね、っていう思想を持っておくこと。
アラン・ケイは、コンピュータは軍事や金融ではなく「人間の知性と創造性を開放する道具となるべきだ」と考えたからパーソナルコンピュータという概念が生まれた。コンピュータの在り方に疑問を呈したわけですね。
IKEA This Ables
https://thisables.com/en/
家具に取り付けて使う補助パーツを3Dプリンタデータとして公開。
自分たちの持つテーマに愚直に向き合う。IKEAのミッションは「家具をデモクラタイズ(民主化)する」
貴族じゃなくても素敵な家具を持てるように。
「リーダーシップ」とは、魅力的なイシューを提示できる力のことになるのだろうな。
そのイシューを見つけるには「目的に向かわない」ことが必要になる。
仮想空間の解像度を上げる四象限(P75)
タテ軸:みんなで(上)⇔ひとりで(下)
ヨコ軸:非目的型(左)⇔目的型(右)
右側はオンライン(ZOOM)と相性がいいが
それだけでは新しいものは生まれず、左上が重要であり、
左下の自分の時間がないとストレスがかかる。
リンダ・グラットンの言う「生産性資産」と「変身資産」と「活力資産」の中の「変身資産」ね。
それが旅に出て人に会うことなのかもしれないですね。ご当地の美味しいものを食べるのは「活力資産」のアップか。
「人生を経営する」ためにイニシアティブ・ポートフォリオをつくり、意識すること。
会社の外側のプロジェクトに少し参加してみるとか、そういう小さなステップの積み重ねが人生を大きく変えてくれる。とにかく打席にたって自分が適材適所になる場所を探すというのは、仮想空間シフトが広がると余計に重要になると思っています。
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ここまで一部引用。
いやあ、わかりやすい。
ZOOMがうまくいく集まり、うまくいかない集まり。
オンライン飲み会とかは左上象限にあるのだけど、
やっぱそれには身体性が必要なのだなあと。
僕がこの本で重要だと思える、アイデンティティのところを抜粋します。
本書P92~
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どうせ仮想空間でしか仕事をしなくなるのなら、そもそもデジタルアイデンティティを持てばいい。まず仕事が会社と言う組織ベースではなく、プロジェクトベースになると、あなたは「〇〇社の社員」というアイデンティティではなくて、「そのプロジェクトの中の〇〇係の人」という役割に紐づいたアイデンティティを持つようになります。
アイデンティティというのは関係性の中で築かれるものですからね。そしてすべての人がさまざまなプロジェクトを渡り歩くわけですから、自然と複数のアイデンティティを持つことになります。だって、このプロジェクトではリーダーだけれど、あっちのプロジェクトでは単なるエンジニア、という働き方になるわけですから、役割に紐づくアイデンティティは当然複数に分かれていく。
その中で自分のアイデンティティを好きになるためには、その自分の役割、係を好きにならないといけないわけですが、それはすなわり「仕事の目的、意味」です。だから、魅力的なイシューのもとで、熱量をもって仕事を消費するということが、自分というアイデンティティを愛して精神状態を健康に保つことになるわけです。
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いいですね。「デジタルアイデンティティ」っていう感覚。ネット上のもうひとつの人格。これってインターネット黎明期にはみんなが持っていたはずなのに、フェイスブックによって現実空間とネット空間が同一化されてしまったのだろうな。若者のフェイスブック人口が少ないのは、リアル社会と同一化された世界だから、みたいな理由もあるでしょうね。
さらに、この本は、近代化=都市化に一石を投じる
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近代化というのは都市化とイコールなんですね。近代化というと産業構造の変化が起きて、一次産業から三次産業へとシフトする。これはつまり畑とか森とか海から財を作っていた人たちが情報から財を作るようになるわけです。情報から財をつくると言うのは、はじめに語った脳を工場にしてあさまざまなアウトプットを生産していくような仕事をするということですよね。これまでは物理空間に縛られていましたから、脳を工場にすると一極集中にならざるを得なかったわけです。
自分の脳で生産した情報は、また他の誰かの脳にわたってさらに磨かれたりするわけですが、そのためには二つの脳みそが近くになければならなかったので。工場を移動させるのは無駄なので、じゃあどうするかといえば近くに工場を置くしかない。だから本当は住みたいところが他にあるけれど、三次産業として情報を扱っていく都合上、多くの脳みそが東京というひとつの都市に集まらざるをえなかったわけですね。これは世界共通の事象ですから近代化と都市化はかならずセットで起きることになります。
その一方で、今回起きたパンデミックというのは都市を狙うものですよね。人が密集していればいるほど危険になるわけですから。ある種パンデミックというのは都市が生み出した病とも言えるわけです。これまで都市というのは近代産業を支えている最重要ポイントだったのですが、それが最脆弱ポイントとなってしまった。これは人類史に残る事件なのではないかと私は考えています。
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いやあ、これですね。春くらいにウィークリーオチアイでも言っていた。コロナウイルスは都市への挑戦だと。
そして、この後、山口さんが「東京こそが仮想空間である」と語ります。今となっては仮想空間上で作れるものをわざわざ資源を使って物化させているだけの存在であると言うことができます。
まさにそうですね。今まさにその過渡期にある。
そして、最後に紹介したいのが
こういう本にありがちな「これからの世界を生き抜く10のアクション」から。
その1「境界性領域をつくる」の中での山口さんの発言を。
シチュエーションやコンテキストに応じてアイデンティティを切り替えるということを考えてみたときに、「アイデンティティデザイン」という考え方がこれからは必要になってくるかもしれません。人のアイデンティティは人間関係の中の位置づけで、成り行きで決まっていくようなところがありますが、仮想空間シフトが起きると、必ずしも顔が見える関係性の中だけで物事が進むわけではないので、自分の「ブレないアイデンティティ」をキャラクターとしてしっかりと持つということが必要になると思います。
これですね。「アイデンティティデザイン」
自分のアイデンティティをデザインし、プロジェクトに参画していくこと。
それを複数個もつこと。Z世代(1996年以降生まれ)は普通にやれていることなのかもしれない。
彼らが覇権を握るのは15年後くらいなのだろうけど、それを新型コロナウイルスが一気に変えてしまっている。
だから、おじさん世代もシフトする必要があるよねっていう話。
「アイデンティティ」(自分らしさ)だってフィクションになっていく。
本当の自分とはなにか?
自分が本当にやりたいことは?
という問い自体が無効化される時代。
それは言い換えれば、アイデンティティそのものをデザインできる時代になると言えると思う。
「仮想空間シフト」は、リアルとネットの境目が溶けている状況のことを言うのだろう。
そして、「学び」の文脈で言えば、ますます地域というフィールドの価値が増すだろうと思う。
東京から地方の高校に進学して学ぶ。
地域の大人と複数個のプロジェクトを立ち上げ、それぞれでアイデンティティをデザインする。
そのプロジェクトには自らの学びのために東京から参加している会社員がいたりする。
進行しているプロジェクトを他地域の高校生と共有・ブラッシュアップする。
そんな学びのカタチが見えつつある。
いやあ、面白かったですね。
僕の中の面白かったポイントは3つ
1 リーダーとは良いイシューを提示できる人
2 「生産性資産」「変身資産」「活力資産」をマネジメントする=人生を経営する
3 アイデンティティはデザインできる。しかもそれはZ世代以降であれば普通にできる。
そんな感じですかね。
「探究」の授業設計に良いエッセンスを頂きました。
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