2021年10月20日
そして「つなぐ」
明治元年創業の山崎糀屋6代目、山崎京子さん。
いつも高校生たちとお世話になっています。
そんな山崎さんのお話と糀のレシピが詰まった1冊
「糀入門」(山崎京子 新潟日報事業社)
山崎さんからいつもお話を伺っている
糀の話や味噌の話も書いてあります。
なぜ味噌を煮るのにガスや圧力釜ではなく、薪火を使うのか。
これ、僕も昨年の春に見せてもらいました。
~~~以下本書より引用
発酵食品をつくるために一番大切なのは徹底した温度管理です。微生物の活動によって成立する発酵食品ですから、それらが死んでしまうような高温で処理すると台無しです。「温度管理=火力を御すること」と考えれば、味噌に使う大豆を煮る時も同じ考え方です。
山崎糀屋では、大豆を煮る時、薪に火を起こして、そのとろ火で大豆を煮ています。火力の強いガスや圧力釜を使った方が効率的だと思います。なにせ大豆を煮てやわらかくするだけで、半日以上かかります。
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この大豆の煮汁を飲ませてもらったのですが、これがビックリするほど美味しい!「れふぇり」さんに持ち込んでジェラートつくってもらおうかと思いました。
あと、この本には、山崎さんのこれまでの半生が描かれ、40代後半から50代にかけては、本業の糀屋女将の他に、アパート新設と経営、スナックのママ、町議会議員と、4足のワラジを履いて忙しい日々を過ごしていたということです。
昨年の「まなび体験会」で聞いて度肝を抜かれたマサイ族に会いに行った話も収録されています。世界中の人たちがどんなものを食べて、どんなからだの仕組みをしているかが知りたくて世界14か国を歩いたのだと。
その中にアフリカ・ケニア・マサイ族や極北イヌイットに会いに行った話が書いてあり、彼らが「牛の生き血」や「アザラシの肉」を食べていることを目で見て、民族や人種によって、腸のつくりや消化能力が異なることを実感したと言います。
それにしても、「なぜ、マサイ族はそんなに視力がいいんだ?」と問いかけ、実際に会いに行ってくる、なんて、「探究的学び」そのものですよね。問いと発見の連続。昨年制作した「プロジェクトA探究者たち」っていいネーミングだなあと。阿賀町にはたくさんの探究者たちがいるんです。
この本の冒頭に、「こうじ菌」そのものの説明が載っています。こうじ菌は日本の「国菌」として指定され、和食文化において果たしてきた役割が大きいということです。
こうじが伝来したのは弥生時代とも言われ、奈良時代の書物には記載があったと言われています。「発酵」という文化はそれぞれの地方や国にありますが、こうじ菌をつけることで腐敗ではなく発酵に導く、というのは日本の風土(温度や湿度)に合っていたのでしょう。
そんな糀について学ぶこと。微生物の偉大さを体感すること。「受け継がれてきた何か」に思いを馳せること。たぶん、そこから始まっていくものもあるのだろうな、と思います。
前回のブログに、自分で「決めて」みんなで「つくる」と締めくくりましたが、実はその先に「つなぐ」があるのかもしれないと思いました。「つなぐ」とは、「人と人がつながる」ことではなく、時間軸的に「継いでいく」ということ。
弥生時代、奈良時代から連綿と受け継がれ、発展してきた糀、そして発酵文化。明治元年創業、山崎糀屋6代目の山崎京子さんは、「つないできた」人だし、「つなぐ」人だ。
僕は、アイデンティティを「場」によって構築しようとしているのだけど、そのキーワードとしても、継いでいくという意味の「つなぐ」が大切だと思っていた。
「経済成長」というスローガンのもと、地域社会や家制度は崩壊させられ、個人は「ひとりの力」で「自立」するように強制させられた。
それはいったい誰のためだったのだろう。
http://hero.niiblo.jp/e346221.html
(参考:14.1.30 家電を売るために「夢を持て」?)
今年春に読んだ「進化思考」(太刀川英輔 海士の風)で、「人間が生物であること」を再確認した。
http://hero.niiblo.jp/e491673.html
(参考:21.4.26 人間が生物であること)
僕たちは生物として「継いでいくこと」を前提としているはずだ。その実感を取り戻していくこと。そのためには、糀のような、つながれてきた文化を肌で感じることが大切なのかもしれない。
山崎京子さんのように好奇心を表現して前進・創造しながら、問いを探究していくこと。
そして「受け継がれてきた何か」を次世代につないでいくこと。
それは、高校生や若い人の最大の課題である(と僕が思っている)
自分らしさ(アイデンティティ)問題にも直結していると感じる。
自分で「決めて」みんなで「つくる」そして「つなぐ」
その繰り返しで「自分らしさ」は創られる。
あなたが「継いでいきたい何か」は何ですか?
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