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ニシダタクジ
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 ツルハシブックス劇団員。大学在学中、「20代サミットメーリングリスト」に出会い、東京王子「狐の木」に育てられました。豊かさとは、人生とは何か?を求め、農家めぐりの旅を続け、たどり着いたのは、「とにかく自分でやってみる。」ということでした。
 10代~20代に「問い」が生まれるコミュニケーションの場と機会を提供したいと考えています。



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2023年05月18日

ともにつくる小さな旅

ともにつくる小さな旅
「〈学級〉の歴史学-自明化された空間を疑う」(柳治男 講談社選書メチエ 2005年刊)

「子どもたちに民主主義を教えよう」からの読書サーフィン
http://hero.niiblo.jp/e493060.html

「学級」とはいったい?
そんなことあまり考えたことなかったです。
確かに「自明化」(当たり前)されていますね。

今日はまだ第一章なのですが、アウトプットしたかったので書いてみます。
テーマは、「学級」と「パック旅行(ツアー)」です。

~~~以下メモ
中世までの学校に「学級」は存在しない。

中世の学校は多くの場合一つの部屋でしかなく、しかもそれは「教室(class room」ではなく、「教場(school room)」と呼ばれた。この「教場」の中にいる子どもは、年齢がまちまちで、同年齢の子どもの集まりなどは見られなかった。われわれがカリキュラムといっている、教授活動の全体的な計画なども、まったく存在しなかったのである。
~~~

いいですね。まずは前提を疑う、って大切なことだなと。

第一章では、「学級」を疑う、と題して、パックツアーと学級について比較している。
~~~
共通する点
1 指導する側と指導される側から構成される集団である
2 期間が限定されて成立する集団である
3 参加者の選択の自由度が少ない集団である
異なる点
1 人々が自発的に集まった集団と強制的に集められた集団という違いがある
2 参加者の年齢が問われない集団と、参加者の年齢が統一された集団という違いがある
3 参加者の相互関係が非競争的状況にある集団と、競争的集団という違いがある
4 参加者による集団形成が短期間で終了する集団と、長期間にわたる集団という違いがある
5 大人が主として利用する集団と、青少年が主として利用する集団という違いがある

簡単に言えば、「学級」とは、「強制されたパック(旅行)」という性格を持っている
そうすると「学級」は多くの問題を抱えた集団となる。

1 学習意欲のない子どもも受け入れなければならないという使命を学級集団は背負っている
2 学習の順序を、子どもが自分で決定することができない
3 年齢が無理に統一されることにより、子どもの中で比較的年長者が支配するという自然の秩序が存在しない、いびつな集団が形成される
4 ある程度均質な集団の中で、児童・生徒は数字でメリハリのついた成績をめぐる競争状態に常に置かれる。
5 仲良しの友達ができれば幸いだが、どうしても仲良しになれない同級生と、一年間も、あるいはそれ以上の長期間にわたって付き合わねばならない。
~~~

いやあ。
「学校あるある」ではなくて、「学級あるある」だったんですね。これは。

そして、本日のメイン、学級とパックツアーとの共通性です。
まずはパックツアー(旅行)とその前からある「冒険旅行」との違いから

~~~
地理も言語もわからないところへの旅行には、どのような危険が待ち受けているかわからない、「未知との遭遇」というある種の冒険の試みであった。パックツアーが、それなりの営業成績を収めうるようになったのは、旅行から冒険性や偶然性をなくし、それを安定した、あるいは安心しうる旅行へと切り替えた点にある。

冒険旅行に代わって、安全で安い旅行をするには何が必要か。それは、未知の世界への旅行が持つ冒険性、偶発性をできるだけなくし、旅行に計画性と利便性を与えることである。目的地、滞在ホテル、利用交通機関、必要経費、案内係、参加人員をすべて事前に手配して決定しておき、後は計画されたスケジュールに沿って行動する。このことでより安定した、そして安い旅行が可能となり、誰でも気楽に参加できる。簡単にいえば「旅行に関するすべての要素を事前に制御しておく」ということである。

「学級」という集団もまた、この事前制御の世界である。ある曜日、どの時間に、どの「学級」の生徒が、どの教室で、何を学習するのか、誰が教えるのか。必要なことはすべて事前に「時間割」として決められている。この事前制御という意味で、パックツアーのグループと学級集団はまったく同じ性格を持っている。
~~~

いやあ。
それです。

「探究的学び」が教室という箱の中で、なかなか難しい理由。
「達成と成長」パラダイム「発見と変容」パラダイムとか。
予測不可能性と一回性というエンターテイメントとか。

今回もっとも驚いたのが、パックツアーの始まりと、学級制の始まりが 同じ時代のイギリスの貧民救済という目的から始まっている、ということだった。

~~~
「学級」とは、都市のスラム街に集まる貧窮児に教育を施して勤勉な生活態度を身につけさせ、また治安の維持を図るために集められた貧民教育の中で、子どもを学校へと組織化する方法として作り出されてきた。

パックツアーは、酒におぼれ、社会の底辺に沈んでいく貧しい大人たちを酒から切り離し、勤勉な生活態度と健全な娯楽を身につけさせようんとする禁酒運動の結果として生まれた。
~~~

!!!
パックツアーは禁酒運動から始まったんですか。
へえボタン連発したい。(古い)

~~~
パック旅行とは、バプティストの宣教師、T・クックの福音主義的禁酒運動にてその発端を持つ。彼は居酒屋入り浸り、動物を戦わせる野蛮な気晴らしや賭博に明け暮れる人々に、酒に代わるレクリエーションとして楽しみを与えることを考えた。

小旅行に当時誕生したばかりの汽車の旅を結びつけるというアイデアを生み出したことから旅行の大衆化は始まった。

彼は1841年、イギリス中部の都市レスターから、約10マイル離れたラフバラで開催された禁酒大会に多くの市民を参加させるために、500人前後の人々を汽車で運ぶ計画を立て、この大会を成功させた。

この団体旅行は、禁酒運動という宗教上の集会への参加として行われたが、往復運賃は有料であり、その他に軽食と娯楽のための費用も参加費に含まれており、料金はいわばパックとして徴収された。

その後、スコットランドの観光を機に、一つの事業として旅行業を独立させた。すなわち目的地の決定、ホテルや旅行会社との折衝、旅行内容の編成という、旅行に必要なあらゆる業務に事前の準備を行い、ガイドブックを発行して、自らはマネージャーの役割を果たすようになったのである。
~~~

いやあ。そうだったのか。

宗教上の禁酒運動から旅行業が成立していくって面白い話だなあと。日本では、都市生活者が明治初期にはいなかったので、パック旅行が事業として成立するのは高度成長期になってからである。

そしてそのことが、日本の「学級」の「生活共同体」的な性格を増す要因になっていくのだと本書は第2章へとつづきます。

「学級」というパックツアー(旅行)。

買いたい、行きたいと意思表示していない1年間の旅行に、強制的に参加させられていのが「学級」だとしたら、、、
大人だったら絶対いきたくないですよね。

しかも、イギリスと違って当時の日本は農村的秩序の中にあり、そこに合わせて、「生活」そのものを抱え込まなければならなかった、と、柳さんは説明します。その詳細は第二章以降に。

ともにつくる小さな旅

昨日は只見高校1年の「総合的な探究の時間」でした。
授業はフォトスゴロクをつくってみる、でした。

あらためてやってみて思うこと。フォトスゴロクは、「発見と変容」、そして「予測不可能性(偶然性)と一回性」というコンセプトを体現している授業だなあと。

・町を観察し!と?を探す⇒自分の心を揺さぶる⇒ゆさぶられた写真を撮る⇒プレゼンする⇒すごろくをつくる

そんなプロセスの中に
・自分を知る、自己を開示する
・!と?をプレゼンする
・他者との違いを楽しむ
・場のチカラを活かす
・やってみてふりかえって改善する
・身体性の同期
っていう要素が詰まっていて。

「ともにつくる」小さな旅。
そんな感じのプログラム。

僕たちがつくろうとしているのは、きっとそういう感じの授業。
決まり切った予定通りのパック旅行でもなく、冒険だらけの旅でもない。
計画通りに進むこともあるけれど「発見と変容」の余白がある小さな旅。
予測できない「発見と変容」を、場のチカラを使って、生み出していこうと。

パック旅行と冒険旅行の「あいだ」にある、「ともにつくる」小さな旅のような授業がともにつくれないだろうか。

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Posted by ニシダタクジ at 08:17│Comments(0)日記学び
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