2023年08月31日
「アンケート」と「インタビュー」

「フィールドワーク増訂版 書を持って街へ出よう」(佐藤郁哉 新曜社)
プロジェクト学習を進める上での違和感として、「アンケート」と「インタビュー」の手法の違いが挙げられて、調査=アンケートみたいな方法論に対して、そこにどんな意味があるのか?と思った。
すでに問いに対する仮説があって、検証する方法としてのアンケートはいいのかもしれないけど、その仮説や問いを見つけ出すためのアンケートなど存在するのだろうか?
仮説が分かっていない段階で、行うべきはインタビューだと思う。そこで出た言葉や表情に違和感をキャッチして、問いをつかむ。問いにまでいかなあくてもキーワードを掴み、さらに文献を調べたりインタビューをしたりする。そうして問いにたどりつく、の繰り返しだろうと思う。
僕自身が本屋をやっていたときに、「やりたいことがわからない」「自分に自信がない」という大学生が多数来店し、その悩みを話していった。それは、僕の中での大きな違和感だったのだけど、「孤独と不安のレッスン」(鴻上尚史 だいわ文庫)をはじめとする読書を通して、そのメカニズムを自分なりに解釈していった。それは僕的に言えば(自分が出ていったわけではないけど)フィールドワークと呼べるだろうし、その後実際に大学職員となって国立大学へ潜入(?)し、大学のメカニズムを解き明かそうともした。
それを人類学的なアプローチだと思っていたのだけど、そのフィールドワークとはそもそも何か?を解説したのがこの本の第1章
~~~以下引用
「フィールドワーク・ルネッサンス」
量的調査=科学的研究法の時代を経て、質的(定性的)研究法と呼ばれるアプローチ全体に対する再評価が起こってきたのが1970年代。
・「科学」的な思考法と研究法、特に「実証主義」と呼ばれるアプローチに対する異議申し立て
・西洋中心の思考方式や世界観あるいは「近代」や「合理性」「理性」についての真剣な問いかけ、および、その問いかけの根拠として人類学的な異文化研究がもつ重要性の再評価
・「ドラマ」「テクスト」「レトリック」といった人文系の学問で使われる発想の社会科学系の学問分野への応用と、それに伴う「分析」から「解釈」への力点のシフト
・「感じられる世界」「生きられる世界」と身体性に関する関心の増大
~~~
ここで出てくる
定性的調査(質的調査)と定量的調査(量的調査)について
フィールドワーク=質的調査の代表
質的調査:深く狭く調べるアプローチ
量的調査:浅く広く調べるアプローチ
P79にその対比が書かれているけど、なかなか面白いなと。
じゃあ今日、「地域の(自分が共感しうる)課題を発見するために、取るべきアプロ―チとしては、圧倒的に質的調査なのだろうと思う。
今の自分だけの問いに出会うこと。それが出発点だと思う。
だからこそ、高校生は数十件の「アンケート」をとるよりも、数件のインタビューをしてほしいと思う。インタビューからキャッチした違和感を問いにつなげる、問いから仮説をつくる、仮説から実践を行う。
そのようなプロセスを踏んでいくこと、その出発点にフィールドワークとしてのインタビューがあり、現場体験があると思う。
この
フィールドワーク(たとえばインタビュー)⇒違和感のキャッチ⇒言語化⇒問い
この3つの矢印をどう進めるか、がすごく課題なんだよね。